その星、輝きません!
 役員の方々への挨拶もすみ、彼の家でほっと一息ついた。

 少しづつ慣れてきたが、未だに、この広い家に驚く事がる。このソファーだって、私が二人寝転んでも、まだ余るんじゃないだろうか?


 やはり、慣れない事は疲れる。でも、有難い事に、彼が築き上げた会社という事もあってか、こうでなければならない、こうすべきという決まりがない。自分が正しいと思う事、自分に出来る事をやればいいという事を感じる事が出来た。

 私は、私らしく、歩いていけばいい。時には、迷ったり、間違える事だってあるだろう。でも、私の隣にはいつだって、彼がいるのだから大丈夫だ。

 まさか、自分が誰かと一緒に歩んでいくなんて思っていなかった。私には出来ない、私には向いてないとずっと思っていた。



「星那、一杯どうだ?」

 彼が、手にしたワインを軽く上げた。

「うん」

 彼の後に続いて、テラスへと出た。

 ソファーに並んで座ると、彼の差し出してくれたグラスを受け取った。グラスに赤ワインが注がれた。軽く、グラスを交わして口の中へ含んだ。

 まだ、少し肌寒い風が、頬を掠めていく。

 なんとなく二人で空を見上げた。
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