体育祭(こいまつり)
「このままじゃ徳山君、勘違いしちゃうかもよ? いや、もうしてるのかも」
悠香がそう言った。
「大丈夫だよ。多分……」
私はそう答えながら、正直、微妙なところかもと思う。
最近徳山君は、部活中こっちをよく向くし、部活中じゃなくても、校内で会ったときは笑いかけてくる。そんな純粋な笑顔を痛く感じることもある。
「りり、……徳山って奴が好きになったのか?」
健二が話に加わって来た。
「だから、違うんだよ。そういうのじゃなくて、目の保養」
「……って、好きなんじゃん」
「違う。もう人は好きにならない。あんな思いはしたくないから」
「……ふーん。でも、それ、寂しくないか?」
「だよね! 私もそう思う。世界中にはいろんな人がいるんだよ? 元彼と同じ結末になるとは限らないよ?」
悠香も健二の言葉に頷いた。
「……まだいいや」
私の返事に、悠香と健二は顔を見合わせ、溜め息をついた。
「でも、りりにはりりの事情があるけど、徳山君を勘違いさせてるんだったら、やっぱり可哀相だよ。それは考えてあげなよ?」
悠香の言葉に、
「……うん……」
と私は頷いた。苦い思いが広がる。
私は徳山君が「好き」ではないのだ。でも、彼の走りを見ることで、癒されている自分がいる。この感情をどう表現すればいいのだろう。
「でも、そんな簡単に誤解するものかな?」
私は自己弁護の言葉を口にする。
「視線って意外に気付くものだよ?」
健二が私の目をまっすぐ見て言った。その言葉には力があって、私は自分のしていることに罪悪感を覚えた。
「分かった。やめる」
私は徳山君をこれからも好きになるとは思えなかったし、見ることで一方的に迷惑をかけることになるのであれば、やめることは仕方ない結論なんだろう。
私はその日からグラウンドに座り込むのをやめた。時々、廊下の窓から徳山君を見ることはあったけれど。