音に祈りを!歌に願いを!
tear――真空は、そう言ってから男性に目を移す。

「……父さん。この子たちが昨日話してた子……?」

「そうだよ。まぁ、そういうことなので……真空、後は頼んだよ……ここの施設長であるとはいえ、仕事をサボるわけには行かないから」

「はいはーい。任せて任せて」

真空の言葉に、男性は微笑むとどこかへと歩いていった。男性の姿が見えなくなった後、「……じゃあ、順を追って……」という声が聞こえてきたから僕は声がした方を見る。

「……さっきの人は、僕のお父さんなんだ。僕らは、シャドウと呼ばれている闇の音楽……昨日、君たちが遭遇した怪物のことだよ。そのシャドウと戦う奏者や護衛を育成する、この施設を経営しているんだ」

「……闇の、音楽……」

僕の言葉に、真空は「そう」と頷いた。

「この世界には、2種類の音楽があるんだよ。1つ目は、僕たちが普段耳にする「光の音楽」。もう1つは、忘れ去られた音楽が意志を持って暴れるようになる「闇の音楽」。その闇の音楽を浄化するのが、奏者と護衛の仕事だ。あとは、習うより慣れろ。シャドウと戦ってるうちに、色々と分かってくると思う……じゃあ、陽音と悠は今から別々に行動してもらいたいんだけど……大丈夫?」

真空の言葉に、僕と悠は同時に頷く。
< 12 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop