強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 つまり、俺は依子のことが好きすぎて目で追うことを優先し、言葉を掛けるのを忘れていたという事か……?


 なんてことだ、と思う。

 つまり依子は、俺のことが好きだけれど確信できる言葉が無くて不安がっていたということじゃないのか?

 そんな彼女の不安にすら俺は気付けていなかったということか?


 自分のふがいなさ、そしてそのせいで大事なものが離れていくという事実に血の気が引くような思いだった。


「え? ケント? どうしたの?」

 返答もなく固まった俺を不審に思っているカテリーナ。


「……まさか!?」

 俺の表情を見て、察してしまったらしい。

「まさか、愛の言葉すら伝えていなかったとか言わないわよね……?」

 そんなわけないでしょう? と確認してくるカテリーナの目を俺はまともに見れなかった。


「うそ……まさか本当に?」

 驚愕の表情。
 そして、焦り始める。

「好きだとか、依子があなたにとってのウェヌスだとかは伝えてるわよね?」

「……」

 その質問にも答えられない俺に、カテリーナは顔を青くしてからキッと俺を睨んだ。


「あーもう、何やってるのバカ! そんなんじゃあ依子が不安がるのも当然じゃない!」
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