強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 言葉の端々や態度から両想いであることは分かっていても、ちゃんとした言葉が無ければ不安になるのは当然だと叱られてしまう。


「全く、気持ちの一つくらいは伝えているものだと思ったのに……」

 言いながら、自分のバッグから車のカギを取り出し俺の胸に突き付ける。

「私の車を貸してあげる。マルペンサ空港の午後14:30の便よ。今すぐ追いかければ間に合うわ、急いで」

 鍵を受け取りながらハッとする。


 まだ、伝えられるチャンスはあるということだ。


 電話で伝えることも出来る。
 また日本まで追いかけて思いを伝えればいいのかも知れない。

 だが、今すぐ会って直接言うべきなんだろう。

 今まで伝えなかった分の信頼を取り戻すためにも。


 それに、今伝えないと依子は俺のことを完全に諦めてしまう気がした。

 後から追いかけて伝えても、信じてくれないような気がした。


 だから、今行かなければならない。


「助かる」
 しっかりとカテリーナの目を見て礼を言う。

「私の為でもあるからね。今度こそちゃんと捕まえておきなさいよ?」
 仕方ないなという困り笑顔に、俺は申し訳ない気持ちで「ああ」と返す。

「行ってくる」

 そうしっかりと伝えると、「行ってらっしゃい」と送り出される。


 俺は車の鍵と小さな小箱を握りしめ、走り出した。
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