強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
「そうか……まあ、確かに心配もするか」

 そう言って私を抱き寄せるケントは愛おしそうに額にキスをしてくれた。


 そんな彼もお母さんと同じかもしれない。

 忙しいだろうに、最近はこうやって家にいるようにしてくれている。


「もう、大丈夫よ。安定期に入ったし、お医者さんも順調だって言ってたもの」

 そう言って私は膨らんできたお腹を撫でる。

 それにつられるように、ケントも私のお腹に手をそえた。


「だが、妊娠出産は何が起こるか分からないだろう? 心配は尽きないさ」


 今私のお腹の中には二人の赤ちゃんがいる。

 はじめてのことだらけだから不安はあるけれど、カテリーナさんも同じくらいに妊娠したので一緒に頑張りましょうって言ってもらえてるし、他にも助けになってくれる人は増えた。

 つわりもそこまで酷くはなかったし、だいぶ落ち着いてきたし……。


 何より、ケントが出来る限りそばにいて気遣ってくれている。


「心配ばかりしていたってしょうがないでしょう? 楽しいことを考えましょう?」

 明るく言うと、ケントは「そうだな」と苦笑を浮かべた。
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