神、恋に落ちる
「キス…しよ?」
「え!?こ、ここでですか!?」
「うん、場所なんて関係ないでしょ?
白羽は俺のこと好きなんだから!」
全く周りが見えていない命。
白羽の口唇をなぞり、口唇を寄せようとしてくる。

「だ、だめ…やめ…」

「おい!!命!
いい加減にしろ!!」
そこに一徹の声が響いた。

「何!!?」
「命、お前が白羽を愛しいと思う気持ちはわかる。
でも仕事の邪魔だ!
それに!!
もうすぐ、みんなが出勤してくる。
“これ”をどうにかしろ!?
その為に来たんだろ!?」
一徹の一喝に、ビクッと身体を震わせ思わず命の服を握った。
「ご、ごめんなさ…」
「あ……白羽!?大丈夫だよ……ごめんね、怖かったね……
…………一徹」
白羽が握ってきた手を掴んで優しく握り、頭を撫でた命。そして一徹に向き直り、鋭く睨んだ。

「あ?」
もちろん、一徹がビビるわけがない。
一徹も鋭く睨み返した。

「白羽に謝れよ」
「はぁ!?」

「え?命さん!?
悪いのは、私達なんですよ!」
二人の恐ろしい雰囲気に、慌てたように間に入る白羽。

「一徹」
「あ?」
「謝れ」
命と一徹。
お互いに視線を離さない。

「はぁー、白羽。
悪かった……
でも、お前に怒ったんじゃない。命に言ったんだ。
怖がらせて悪かった」
「え……いえ…!
こちらこそ、お仕事の邪魔をしてすみませんでした」
ため息をついて謝罪する一徹に、白羽も頭を下げた。

「命、で?
どうにかしてくれ!こ、れ!」
女は先程から、ずっと怯えながら命と一徹を見ていた。
「あーそうだったね。
ごめんね、一徹に迷惑かけて。
とりあえず、君…ここを出ていって!
一徹が迷惑してるんだから!」
女の方に向かい、しゃがんで顔を覗き込んだ。
恐ろしい雰囲気で言ったのだった。

「は、はい…」
女はゆらゆらと立ち上がり、店を出ていった。

「命…さん…?」
「ん?」
「さっきの方は、誰ですか?」
「………うーん、そうだな━━━━━━」
「あ!やっぱ、いいです!」

きっと、元カノだろう。
そんなこと聞いたところで、どうしようもできない。
白羽は、頭を横に振った。
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