君に逢える日
「椛さんは、どうしてハロウィンの日だけ、あそこにいたんですか?」
「あの日は、人間がお化けや妖怪の振りをするでしょう? だから、人間に紛れることができると思ったんです」

 言ってから、その理由を聞かれると困るということに気付いた。素直に答えすぎてしまった。

「じゃあ、これも知ってますか? 人間の子供は、ハロウィンの日にはトリックオアトリートと言うんです」
「聞いたことはありますが、意味までは」

 正直、ハロウィンという日も、よくわかっていない。わざわざ私たちの真似ごとをするなんて、人間はよくわからない生き物だ。

「お菓子をくれなきゃイタズラするって意味なんですよ」

 やっぱりわからない。菓子をねだり、貰えなければ悪戯をするのは、変だろう。

 そんなことを思っていたら、彼が静かに足を止めた。つられるように、私も立ち止まる。

「椛さん、トリックオアトリートです」

 彼はいい笑顔で言ってきた。

「あの、私、お菓子は」
「えい」

 唐突な言葉に若干混乱していたら、彼は私の角を突っついた。

「え?」

 混乱している私を見て、彼は悪戯っぽく笑った。

「本物だってわかったときから、ちょっとだけ、触ってみたいと思っていたんです」
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