君に逢える日
「なんでそんな危ないことをするの? そんなに、あの人間に会いたいの?」

 燈は理解不能という顔をしている。これは危険を犯すことよりも、会いたい人間がいることのほうが、理解できていなさそうだ。

「人間の命は、私たちと違って短い。だから、どんなに危険でも、会えるなら会いたい」

 これは私の本音だった。私の行為が危険だとしても、この思いがあるから、私は人間に紛れに行くのだ。

 燈は小さく息を吐き出した。その表情が諦めを語っている。そこまで呆れられるようなことを言った覚えはない。

「やっぱり、椛は変な子」

 だから、こう言われるのも納得がいかない。

「燈にはいないの? 身の危険を犯してでも会いたいって思う相手」

 ここで同意してもらえれば、少しでも私の気持ちをわかってくれるのではないかと思った。

 だけど、燈は引き続き冷たい目をしている。

「そういうの、興味ないから」

 私たちがわかり合えないのは、この意見が異なっているからだろう。

 それでも昔馴染みの燈とは語り合いたいという気持ちが、ないわけではない。

「いたら楽しいのに」

 そう思って言ってみるが、やはり燈は興味なさそうに、闇に消えていった。
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