君に逢える日
「何を根拠に……」

 燈は彼のことは知らないはず。だからこそ、こんな言葉は私には届かなかった。

「だって、椛は可愛いから」
「理由になってない」

 笑っているということは、今のは冗談だったのだろう。

「その人間、椛のことを助けてくれて、食事に誘ってきたんでしょ? それって、椛のことを好きってことじゃないの?」

 それは少し思った。

 私を誘ってきたとき、耳まで真っ赤にしていた。

 その後に慌てた様子で言っていた言葉も、忘れられない。私のことを知ってくれていたことが、とても嬉しかった。

「……だから言えないんだよ」

 燈は理解できなかったようで、首を傾げる。

「好きな相手が人間じゃないなんて、普通は受け入れられないでしょ」

 思考が最初に戻っていることは自覚している。でもどうしても、いい未来が想像できない。

「もみ」
「椛!」

 燈の声をかき消すように、小鬼の月雲が私の名前を呼んだ。

 月雲は私の膝に手を置き、純粋な目で見上げてきた。

「月雲、どうしたの?」

 泣いていたことに気付かれないように、できるだけ笑顔を取り繕う。

「椛がいつも会いに行ってる人間が、ずっと椛のこと探してるみたいだよ。何かあったの?」

 それを聞いた瞬間、私は立ち上がって走り出していた。
< 8 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop