青い時間はきみの中
「俺、わざわざ探し回るのやなんだけど」

「じゃあ一緒に勉強しよう! 近くにいたら声かけてくれる?」

「まあ、近くにいたら声かけるくらいするけどさあ」

「じゃあ近くにいるね、自習室でいい?」

「うん。いいよ。……必死だなあ」

「必死になるよ。地元が田舎すぎて、駅に着くのが五時半過ぎると電車の本数減っちゃうの、待ち時間すごいことになっちゃうの」


だから、なんとしても五時には帰る準備をしたい。


「大丈夫、任せて。わたし、ちゃんと静かにしてるから!」


ふんぬと握り拳を作ってみせたら、声かけないと帰れないぽんこつに何を任せるって言うんだ、と言われた。


「いや、勉強を邪魔されるのを心配してるのかと思って。大人しくしてるのでお願いします。神さま仏さま青さま……!」

「分かった分かった。よきにはからえ」


そんなわけで、自習室での勉強に、「凛。五時」という実にありがたいタイマーが追加された。

と思ったら、一緒の帰り道も追加された。


あれ。


「声かけたら一緒に帰るだろ。俺は帰らないのに声かけるの意味分かんなくない?」

「たしかに」


それはそうだ。自分に全く関係ないことはあんまり気が進まなくて当然だ。


「だから一緒に帰ろ」

「はーい」
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