青い時間はきみの中
「い、い声……では……ないけど……」

「いい声だよー。穏やかーで優しそうでさ、マイナスイオンって感じで聞き取りやすくていいよね。放送楽しみにしてるんだ」


マイナスイオンをイメージしてそよそよと振った手を、うろたえた目線が追って、揺れて、苦笑いの形になった。


「あー、うん。ありがとう」

「だからわたし、話してみたかったの。無理に付き合ってるんじゃないよ」


言いたかったのはこれなんだけど、回り道をしてしまった。どうも、と控えめなお礼が降る。


「青くんは……、青くんでいい?」

「うん」

「青くんはいつ放送担当なの?」

「朝は水金、掃除は月、帰りは火木」

「わかった、今度から気をつけて聞くね」


よし、と頭にメモをする。このマイナスイオン、浴びないでか。いや浴びたい。


「凛は何部なの?」

「書道だよ。週一なのが気楽なんだ」


へえ、と言いながら、候補を絞ったらしい青くんが、CDの山からいくつか束を抜いた。


「まず第一候補として、ペールギュントの朝の気分がいいかなと思ってる。朝だから」

「ダジャレじゃん」

「だって朝の気分だよ。ぴったりでしょ。曲に朝って入ってたら分かりやすくない?」

「朝の気分って、たーらーららーらーらってやつ? わたしそれ、中学校で朝の音楽だったよ」

「そうなんだ。やっぱり被ってるか。朝にかけるなら朝って入ってる曲を、ってみんな思うよなー」


そんなことを言いながら、二分くらいずつ聞いていって、候補をなんとか三つに絞った。曲名には、頑なに「朝」がついている。


どれにしようねえ、と二人でうんうん唸る。
< 7 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop