【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 何かがおかしい。こんなに心臓が鳴っているのは。病気なのか、と思う。まぁ、心の病にはかかっているのは認める。妄想族だし。
 寮に戻る途中で、ノエルと会ってしまった。彼女は、挙動不審なアイリーンに声をかけた。
「リーン、どうかしたの?」

「あ、いいえ。何も。今日はもう、寮の方に戻ろうかと思っています」

「そうなの? 部室には寄らないのね」

「はい。アディ先生との約束もありますし」

「そうよね。本当に無理なお願いをしてしまってごめんなさい」

「いいえ、私が自分で決めたことですから」

「リーン。無理していない? 顔が赤いけれど、熱でもあるんじゃないの?」
 ノエルに指摘され、アイリーンは自分の頬を両手で包んだ。まだ、ここは熱を帯びている。

「そうですか?」
 と誤魔化し、また明日、とノエルに挨拶をする。

「リーン。無理してはダメよ」
 優しいノエルの言葉が、背中に刺さる。背中でごめんなさい、と言いながら寮へと足を向けた。

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