【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 年末年始の長期休暇前のパーティは、それに入る前の最後の休日に開かれる。だから自由参加であり強制ではない。パーティの件はモイラの耳にも入っているだろうに、何も言ってこないところが彼女なりの優しさ。そのパーティの日に出掛けるという話をしたら、ではうんと可愛くしましょうね、といつもの調子で言ってくれるのも彼女の優しさ。

 イブライムとの待ち合わせはいつもの噴水の前だ。今頃、パーティは始まっているのだろう。外を出歩いている生徒は他に誰もいなかった。だから、先に来ていた彼は遠くからでもアイリーンを見つけ、手を振ってくれた。別にアイリーンが時間に遅れたわけではない。それでも、いつも相手の方が先に来ている。少し小走りで噴水へと向かう。
「お待たせしてしまって、ごめんなさい」
 弾む息を整えながら、言った。

「何も走らなくて、よかったのに。でも嬉しいよ。その」
 イブライムは口元を右手で押さえながら、言葉を探しているようだ。
「その服も似合っているね。初めてリーンと出会ったときと同じ服だ」
 指摘され、ドキっとした。
「ごめんなさい。あまり、服を持ってきていないので」

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