【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 美術館は、いつもノエルと行く大きな書店の近くにあった。こんなに近くにあったのに、気付かなかったのが不思議だ。この辺は大きな建物が並んでいる。休日の昼間であるが、学生はいない。皆、学院のテスト打ち上げという名のパーティに行っているからだ。美術館なので、小さな子供もいない。成人を迎えた者が、一人で鑑賞していたり、年配の夫婦が朗らかな笑顔を浮かべて、ゆったりと絵を見ていたりする。

「イブ様は、よく来られるのですか?」
 チケットを手にしたアイリーンが尋ねた。
「よく、ではないが、たまに。一人になりたいときとかは」

「では、いろいろと教えてくださいね」
 アスカリッドの絵を見たアイリーンは、プーランジェのそれと違うことに気が付いた。やはり、こちらは建物もあたたかいが、絵もあたたかい感じがする。色使いも全体的に淡い。このような色遣いを、月雲の表紙絵にも取り入れられないだろうか、ということも考える。

「イブ様」
 静かな空間なので、アイリーンはイブライムの耳元で囁いた。
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