【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「お嬢様」
 髪を結っていたモイラが声をかける。
「ご自分の身内で想像なさるのは、おやめください」
 バレている。多分、先ほどのことを言っているのだろう。
「それから。お食事は、モントーヤ伯のご子息もご一緒と思われますが、むやみにカップリングするのもおやめください」
 バレている。多分、これからのことを言っているのだろう。
 モイラは鋭い。同志だが、いろんなことを心得ている。
「はい」と、アイリーンは小さく頷いた。

 アイリーン的には、父親にもう少し威厳があればそんなことを考えなくても済むのに、と思っているのだが、哀れなのは父親のボイド公爵。ただでさえ童顔なことを気にしているのに、それが原因で娘にもいいように扱われているとは、本人は知らないだろう。むしろ、知らない方が幸せだ。
「リーン、準備はできたかな?」
 部屋の外から、そんな哀れな父親の声が聞こえてきた。

「はい」
 返事をして部屋を出ると、こちらも着替えた父親がそこで待っていた。

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