【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 何回目かの二人きりではないデートのとき。ケーキが美味しいという評判のカフェで、他愛もない会話を交わしていたが、話題がふと卒業後の進路の話となった。
 アイリーンは、卒業後は宰相である父親の秘書というか手伝いというかをすることになっていたから、自国に戻るという話をした。イブライムとしてはアイリーンにはこのアスカリッドへ残ってほしいというのが本音。だから、プーランジェに戻るというのであれば、結婚の約束をして欲しいと言われた、ような気がする。気がする、だけ。

「されたような気がします」

「もう、相変わらずハッキリしない二人ね」

「ですが。私はプーランジェに戻ります。その、だから、あの。どうしたらよいでしょう?」

 プーランジェに戻らないほうがいいのか。むしろ戻れないのか、とも思える。

「アイリーン」

 イブライムの父親、つまり国王陛下から優しく名を呼ばれた。あのおしゃべり好きな国王だ。

「私たちはあなたの立場もわかっているつもりだ。だから、もしイブライムと一緒になるというのであれば、イブライムには国境の領地を任せたいと思っている。そこであれば、アイリーン嬢もどちらの国にも行きやすいだろう?」

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