冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「あっ……」

 蝶子が手を伸ばすより先に、紀香がそれをつまみあげる。ぞっとするほど暗い笑みを浮かべて紀香は蝶子を見る。

「母子手帳……ふぅん、そういうこと」

 蝶子はなにをどう説明したらいいのかわからず、口ごもった。紀香は声をあげて笑う。狂気に満ちた声が、幸せでいっぱいだったはずのこの部屋に響き渡る。

「彼が帰国してまだ半年も経ってないのに……おとなしそうな顔して、男をたぶらかすのだけは上手ね」

 蝶子の顔が羞恥でかっと熱くなる。晴臣との関係をそんなふうに言われたくはなかった。

「隠すことないわ、昔からそうだったもの。無垢なふりしてチヤホヤされて、その顔があればたいていの男は思いどおりにできるわよねぇ」
「そんなこと……」

 紀香の怒りが蝶子には理解できない。

「やめてっ。いい子ちゃんぶって、影で私をブスだって笑っているのは知ってるんだから。そういう女を私はいっぱい見てきたのよ」
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