冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
紀香に耳には蝶子の言葉は届かない。彼女はふいと視線を蝶子のバッグに向けた。さきほど部屋に戻ってきたときにソファに置いたものだ。
「そのバッグだって、いくらすると思ってるのよ。そこらへんの女子大生が持てる値段じゃないわ」
柔らかな羊革のバッグは海外の高級ブランドのもので、たしかにとても高価だ。だが、これは蝶子がねだったものではない。数年前に七緒が紀香とヨーロッパ旅行に行ったときに七緒が気に入って買った品だ。だが、七緒は『現地で見たときは素敵だと思ったけど、なんか違う。やっぱり別のを買って!』と駄々をこねて、すぐに新しいバッグを買ってもらったのだ。その結果、これは蝶子に回ってきた。
(だけど、紀香さんのお金で買ったものを使っているのは事実だ……)
経済的なことを言われてしまうと、まだ学生で一円も稼いでいない蝶子は言い返すことができない。押し黙ってしまった蝶子に紀香はますます腹を立てる。
「好き勝手するというなら、このバッグも、うちのお金で買ったものはすべて返してちょうだいねっ」
蝶子のバッグをつかみ、勢い任せに床に叩きつけた。バラバラとバッグの中身が床に散らばる。そのなかには、先日役所でもらったばかりの母子手帳もあった。
「そのバッグだって、いくらすると思ってるのよ。そこらへんの女子大生が持てる値段じゃないわ」
柔らかな羊革のバッグは海外の高級ブランドのもので、たしかにとても高価だ。だが、これは蝶子がねだったものではない。数年前に七緒が紀香とヨーロッパ旅行に行ったときに七緒が気に入って買った品だ。だが、七緒は『現地で見たときは素敵だと思ったけど、なんか違う。やっぱり別のを買って!』と駄々をこねて、すぐに新しいバッグを買ってもらったのだ。その結果、これは蝶子に回ってきた。
(だけど、紀香さんのお金で買ったものを使っているのは事実だ……)
経済的なことを言われてしまうと、まだ学生で一円も稼いでいない蝶子は言い返すことができない。押し黙ってしまった蝶子に紀香はますます腹を立てる。
「好き勝手するというなら、このバッグも、うちのお金で買ったものはすべて返してちょうだいねっ」
蝶子のバッグをつかみ、勢い任せに床に叩きつけた。バラバラとバッグの中身が床に散らばる。そのなかには、先日役所でもらったばかりの母子手帳もあった。