冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 蝶子は不思議そうに彼を見あげる。が、予想以上に晴臣の顔が間近にあり、慌てて顔を背ける。全身の熱が顔に集まっているのでは、と思うほどに顔が熱い。
 ――誰もいない部屋で、ベッドに男性とふたりきり。そんな状況を今さら意識してしまって、蝶子はますます頬を染める。

(じ、自意識過剰よ。晴臣さんからすれば私なんてただの子どもだろうし)

 うるさく騒ぎたてる心臓をなんとか静めようとする蝶子の耳に、晴臣が低くささやいた。

「君は無防備すぎる。あまり男を信用するな、もちろん俺も含めてだ」

 左耳をカバーするためか常人より鋭敏な右の耳を通して、彼の艶めいた声が蝶子の脳を刺激する。蝶子の白い肌がぞくりと粟立つ。

「は、晴臣さんはそんな人ではないとわかっているので」

 消え入りそうな声を蝶子は絞り出す。うつむき白いシーツを見つめていたが、晴臣が小さく息を吐いたのを気配で察した。蝶子がおそるおそる顔をあげると、彼は困ったような表情をしていた。

「扱いの難しいお嬢さんだな」
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