冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 そう言った彼の唇が近づいてきて、ゆっくりと蝶子に重なる。ふんわりと柔らかで、想像していたよりずっと甘美だった。背中の力が抜け、蝶子の身体はぐにゃりと崩れそうになったが、晴臣がそれを支えた。背中に回された腕にぐっと力がこめられ、蝶子は晴臣の胸のなかに深く抱きすくめられる。と同時に、蝶子の唇を割って彼の舌が侵入する。上顎をなぞるざらりとした感触に蝶子は喉をのけぞらせる。
 それでも、彼の攻めがやむことはなかった。絡め取られた舌が、ぴちゃりと湿った音を立てる。背筋がゾクゾクする感覚に蝶子はおののく。

「ふっ、あぁ」

 漏れ出た甘い吐息さえも奪うように、晴臣は角度を変えてキスを繰り返す。彼の指がシャツのボタンにかかり、プチプチと外されていく。視界の下端でたしかにそれをとらえているのに、あらがうことができなかった。媚薬のような彼のキスに、蝶子はすっかり正常な思考を失っていた。

「そう、いい子だ」

 耳元でささやかれる彼の声はダイレクトに脳に響く。彼の熱い舌が耳孔を自由に動き回り、攻めたてる。

「ひゃっ」
「大丈夫、俺が与えるのは甘い快楽だけ」

 ボタンの外れたシャツがするりと肩からすべり落ちる。華奢な鎖骨と、スミレ色の下着からこぼれそうな胸の谷間があらわになる。蝶子は細身のわりに胸が大きい。うらやましいと言われることもあるが、からかわれることもあって蝶子自身は自分の胸をあまり好きではない。

「あまり、見ないでください」
 小さな声でそう訴える。薄明りのなかとはいえ、男性に胸をさらすのは初めてだ。
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