約束の指にキスして。
『………。』

涙が頬を伝う。
健司は、私の涙をふいて、頭を抱き締めてくれた。

『瑛梨。ここ出よう?俺の部屋はここまででかくはないけど、そこそこいい部屋だぜ。』

私は、なにも言わずに健司のシャツを掴む。
辛すぎる。
ずっと桔平と暮らしてきたこの家は、桔平との思いでの宝庫。
ふれるもの、みえるもの全てに桔平が浮かび上がる。

『もちろん、キッペーとエリも連れていこう?日当たりが良いんだ。きっと、キッペーとエリも…』
そこまで言った健司の唇を、キスでとめる。

< 464 / 526 >

この作品をシェア

pagetop