キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「彩織。なにボーッとしてんの。早く持って行って」
「あ、はい!」
「ったく……ほんと使えねー」
ボソッと呟いた先輩の声を聞きながら、私は小物を持って被服室を出た。
ファッション部は、モデルと幽霊部員も含めたら100人を超える大所帯の部活。実際に動いているのは、半数にも満たないけど……。
服を作ってみたくて入部した私もそのうちの1人。
ただ、1年生の私に仕事はない。ほぼ雑用。
だから、今もこうして雑用として、モデルさんが待機中の会議室へ小物の髪飾りを運んでいる。
10月の頭にある年に一度の学園祭──撫高祭。
ファッション部は、撫高祭のファッションショーに向けて、大忙し。年に一度の晴れ舞台だから先輩たちの気合いが入るのも無理ない。
イライラや文句が容赦なく後輩に飛んできても、聞こえないフリ。
ただ……私に向けられる先輩からの陰口は、他の人と少し違った。