キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
夜に紛れた少し暗い赤色の髪。
かきあげた前髪が野生のような鋭い目つきを強調し、スッキリした目鼻立ちが表情を色濃く作る。
────深見先輩。
「よう、深見。てめぇこの前のこと覚えてんだろうな」
「は?なんのこと?」
「呼び出したのにバックレたろ」
深見先輩が来たことで、男たちの意識がすべてそっちへ向いた。
しかし、ホッとする間もなく……。
「あー、あれね。……てめぇらの喧嘩だろ。俺に関係ねぇ」
「てめぇのせいだろうが!」
男が怒号を轟かせた。
……次から次へと。
両親の口喧嘩が可愛く思えるほど、怒鳴り散らす声が止まない。
日南先輩の後ろに隠れている私は、今、どういう状況なのかわからなくて。……だから。
「深見っ!」
日南先輩の叫び声に思わずビクッとしてしまった。
怒っている感じはない。
深見先輩を呼び止めるような……。