キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜

恐る恐る顔を出してみた。


視界に映ったのは、深見先輩の胸ぐらを掴む男と拳を振り上げる深見先輩。

……今にも殴り合いの喧嘩を始めそうな光景だった。


「……離せ」


しかし、振り上げた手は殴ることなく男の手を払うだけ。

……よ、よかった。いきなり目の前で殴り合いの喧嘩を始められたら嫌だもん。


「今度バックレたら、どうなるかわかってんだろうな」

「……ふんっ」

「んだよ」

「てめぇも覚えとけ。次関係ねぇ奴巻き込んだら……ただじゃおかねぇ」

「──っ!」


威嚇するかの如く鋭い声を発した深見先輩。

表情は見えないけど、言葉を向けられた男たちの萎縮するような表情から、余程恐ろしい顔をしていたのだろうと推測できる。


……あまり見たくないな、深見先輩のそういう顔。


深見先輩は問題児集団の中でも1番の問題児──と言われている理由が、ようやくわかった気がした。


< 93 / 273 >

この作品をシェア

pagetop