No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
「…おいし…!」

思わず出た、私の感嘆の声に、

「そうでしょう、そうでしょう」

得意気に笑う律さんに、癒されてまた、笑う。

火傷しないように、カップに息を吹き掛けながら、ゆっくりと飲み込むアップルティー。

優しい甘さは、あの日と変わらない。

いつもいつも、私に安心をくれる。

他愛もないお喋りで埋め尽くされる、律さんと私の部屋。

「……あ、」

思わず声が出たのは、空になったインディゴブルーのカップの底にあるものが浮き出ていたから。


律さんの顔を見たら、律さんも笑っている。

私と同じように、律さんもカップの、底を私に見せてくれた。




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