No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
私の隣に来てくれた律さんは、黙って右手を握ってくれた。

触れる、私の腕と律さんの腕。

たまに訪れてしまう、過去の痛いキオク。

いつまで言ってるの?

なんて、決して言わない律さん。

大丈夫、大丈夫。

大丈夫だよ。ね?

決まって抱き寄せてくれる腕に、安心する。

「ほら、冷めちゃうよ?」

口移しで飲ませてあげよっか?

ふふふ。

からかいを帯びた口調も、愛おしい。

「大丈夫ですッ!」

あわてて引き寄せた、インディゴブルーのカップに口をつけた。


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