雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
俺は早速、その晩、津田に電話をかけた。
「津田、シンガポール転勤の話、俺を気遣ったのか?」
「何でだよ、そんな訳ないだろ。お前が行ったら、寂しがる朝比奈を慰めることができて、俺にとっては好都合だろ?」
「もう、いい加減あきらめろよ」
「そんなに俺の恋心は冷めないよ。向こうに行って、もう一回りいい男になって帰ってくるさ」
「津田・・・」
「そうしたら、もう1度、朝比奈に告白する」
「えっ?」
「そうだ。しばらく会えないから、1日だけ朝比奈と付き合わせて」
「ダメだ。お前は1日で何とかしそうだから・・・」
「ちぇ、残念。だったら、2人で見送りに来てよ。俺、本社に寄ってから出発だから」
「お前、どさくさに紛れて、美咲のこと口説くなよ」
「さぁー、どうかなぁ」
「津田!」
「ははっ!ごめんごめん。いつも淡々と仕事をこなすお前が、朝比奈のことになるとタジタジになるの、面白くて」
「俺をからかうな」
「嫉妬してる俺の気持ちが分かるだろ?じゃあ、当日な」
ほんとにあいつだけは、本気なんだか冗談なんだか・・・
津田の存在は、離れていても支えあって、助け合って、競い合って、俺にとっていい刺激になった。
美咲のことでは、どんな相手だろうと負ける気はしなかったけど、津田の存在だけは、脅威だった。
俺の最強のライバルで、最強の友だ。
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