天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「ディーだよ、パパ。弟子なんだからディーって呼ばないと」

「それは、どうかなぁ……そこも、あとで殿下と相談しようか」

 ミリエラの物言いに、ジェラルドはくすくすと笑う。

 父がミリエラを下ろしたのは、屋敷から少し離れた場所にある庭園内の一角だった。名前も知らない小さな白い花が咲いている。名前も知らない花なのに、なぜか懐かしい気がした。

 くんくんと鼻を動かすと、それはジェラルドの服についていたのと同じ香りだった。

「パパ?」

 ミリエラと手を繋いだまま彼が立ち尽くしてしまうから、ミリエラはそっと手を引いた。

「ミリエラは、この花の名前を知っているかな?」

「ううん。知らない」

 この花には、見覚えがある。記録画像で見た母の手にあった花だ。だから、懐かしい気がしたのか。

「この花はね――"ミリエラ"と言うんだ」

「ミリィと一緒!」

 ミリエラというのは、この国では特に珍しい名前ではないから、自分の名前がどういう理由でつけられたのかとか聞いたことはなかった。

 だが、わざわざここに連れてきたということは。

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