天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「練習はつまらないよ。お手紙、書く。お手紙なら、書く」

「手紙……ですか?」

「うん。パパに……? 手紙なら、読んでくれるかな?」

 ミリエラの言葉に、はっとした様子を見せたニコラは両腕を広げ、がばっとミリエラを抱き寄せた。

「ニコラ、苦しい。苦しいよ!」

「……申し訳ございません、お嬢様。でも、あまりにも不憫で……」

 黒いワンピースの上から着けている白いエプロンのポケットから、ニコラはハンカチを取り出し、そっと目元を押さえた。

(……思いつきで言ってみただけなんだけど、困らせちゃったかな?)

 うーんとミリエラは考え込んだ。

 ミリエラは、生まれてから一度も父と顔を合わせたことはない。

 母をこよなく愛していた父は、母の死の原因となったミリエラを見るのがつらいらしい。

 生まれてすぐ、母の侍女だったニコラの手に託され、侯爵家の敷地の中にある別館に追いやられたというわけである。

(ニコラを困らせたかったわけじゃないんだけど)

 それなら、と作戦変更をした。

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