天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「じゃあ、オーランドに書こうかな。オーランドなら喜んでくれる? あとカークも。カーク喜んでくれるかなあ」

 ミリエラの世界はとても狭い。彼女が知るのは、この別館と侯爵邸の庭だけ。

 顔を合わせる相手といえば、乳母であるニコラ、その夫で護衛騎士のオーランド、ふたりの息子でありミリエラの乳兄妹でもあるカークくらいのものだ。

「あ、あとニコラにも! それならいいでしょ?」

「え、ええ……そうしましょう。そうしましょうね。私にもお手紙をくださるのですか?」

「うん! 楽しみにしててね。あと、紙とクレヨンちょうだい」

「すぐにお持ちします」

 ニコラが隣の部屋に行くのを見送り、ミリエラは今の今までぶらぶらとさせていた足を止めた。

(いつまでも、皆をだましているのは心苦しいんだけど……さすがに言えないよねぇ。精神年齢二十五歳だなんて)

 机に頬杖をつき、ミリエラは真顔になった。

 ミリエラには、日本で暮らしていた前世の記憶がある――前世でも、家族の愛には恵まれなかった。

 両親が離婚した時、前世のミリエラを引き取ったのは母であった。それきり、父とは顔を合わせていない。

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