あやかし戦記 見えない糸

そのことに安心しつつ、イヅナは周りを見渡す。呪術師がどこから現れるのかわからない。警戒しながら進んでいくと、落ち着きを取り戻したアリスが口を開く。

「そういえば、呪術師がフクロウに化けて私たちを見ていました。そして地面から黒い手が……」

「黒い手？キモッ！」

レオナードが嫌そうな顔をした刹那、グラグラと地面が揺れる。まるで巨大な地震にあった時のようだ。そして馬は突然の揺れに驚き、暴れ始める。

「えっ！？待って！」

「お、おい！うわぁぁぁぁぁぁ！」

「きゃあッ！！」

イヅナ、レオナード、そしてアリスは振り落とされてしまい、体は地面に叩き付けられる。刹那、地面から伸びた黒い手が体に巻き付いて動けなくなった。

「この手、この手です！この手がヴィンセントさんを……」

アリスが顔を真っ青にし、イヅナとレオナードは手を解こうともがく。しかし、手はびくともせずギリギリと二人の体を締め付けた。

「うっ！」

「きっしょ！離せよ！」