あやかし戦記 見えない糸
そういえば、ツヤとギルベルトはどこだろうとイヅナは唯一動かせる頭を動かす。地面に転がされているのはイヅナとレオナード、アリスだけだ。

「どんな呪術が来るかなってわくわくしてたんだけど、こんな低級のものかぁ〜」

「あたしとギルベルトはお前たちには負けない。アレス騎士団の部下たちを返してもらおうか」

いつの間に移動したのか、ギルベルトとツヤは地面ではなく木の上に立っている。ギルベルトは剣を抜き、ツヤは拳を構えて戦闘態勢を取った。

「低級?負けない?はっ、笑わせるな」

低い女性の声が聞こえた刹那、ゴウッと大きな音を立てて強い風が吹く。木々が大きく揺れ、その風の中から四人の呪術師が姿を現した。四人の髪は全員白く、生まれ持って呪術師としての才能があるということである。

「この山は我々のような特別な存在以外、立ち入り禁止だ。その決まりを破ったものには十分な罰を与える。これが我々のルールだ」

腰ほどある髪を揺らし、神秘的な輝きを放つファイアオパールのブローチのついた白いタキシードを身につけている女性が口を開く。それに対し、ギルベルトは小馬鹿にしたように笑った。

「へえ、罰?この山に入るな?そんな法律、分厚い弁護士の読む法律の本を見てもどこにも書いてないんだけど。個人のルール押し付けないでくれる?この山、君たちが所有してるわけじゃないんでしょ?」
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