あやかし戦記 見えない糸
ヴィンセントがそう言うと、レオナードの目にも涙が溜まっていく。それを乱暴に拭い、ヴィンセントに抱き付いてレオナードも泣いた。

「心配、かけやがって!」

「レオナード、本当にごめんね」

「ヴィンセントが無事で、本当に嬉しいわ」

「イヅナもありがとう。わざわざ、この村まで助けに来てくれたんだね」

三人で気が済むまで泣いた後、ギルダと話しながら夕食を食べた。ギルダに三人で自分たちの暮らしのこと、アレス騎士団での訓練や任務のこと、たくさんのことを話し、ギルダは笑ったり驚いたり、表情をコロコロ変えていた。

たくさん話して笑っていると、ギルダの顔が少しずつ俯いていく。彼女の周りを纏う空気が変わり、イヅナたちは話すのをやめて彼女を見つめた。

「酷い目に遭ったのに、酷いことを言われたのに、どうして同じ呪術師である私にそんなに笑いかけてくれるの?」

イヅナたちは顔を見合わせる。全員、不思議そうな顔をしていた。ギルダの質問に対する答えなど、最初から一つしかない。
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