あやかし戦記 見えない糸
殺気のこもった目で睨まれれば、頷くしかないだろう。老夫婦は勢いよく頷き、その場を離れていく。そしてイヅナは、ユージーンに抱き上げられた。

「ったく、あんな低級な呪いを避けれないのか?」

「す、すみません……」

ユージーンにため息をつかれ、イヅナは素直に謝る。ギルベルトやツヤならきっと避けれただろう。自分はそれほどまでに未熟な存在なのだ。

「……まあ、大事な村人を救ってくれたことは感謝してやるよ」

頬を赤くしながらユージーンが言い、その様子がどこかツヤと重なってイヅナは笑ってしまう。

「ユージーンさんってツンデレですか?」

「呪いかけるぞ、こら」

イヅナは椅子の上に降ろされ、ユージーンが救急箱の中から包帯などを取り出していく。イヅナは「自分でします!」と言ったが、ユージーンに「怪我人は黙ってろ!」と言われ大人しく手当てを受けるしかなかった。

ユージーンの手当ての仕方は、荒っぽい口調からは想像できないほど丁寧で、驚いてしまう。

「よし、できたぞ」

「あ、ありがとうございます……」

丁寧に巻かれた包帯を見つめ、イヅナはお礼を口にする。ユージーンはフンと鼻を鳴らし、言った。
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