惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 そして僕の口の中に彼女はポイっと何かを放り投げた。
 僕の口の中には小さい固形物の塊の様なものが・・・

「・・・・・・んぶうう!!しょっぺええええああああ!!」

 絶叫と共に口の中がパニック状態な僕は、部屋に置かれていたティーポットの蓋を開けて、そのまま口に流し込んだ。

「ふむ・・・何か焼いた後があるから、たぶんエリーゼが何か食べ物でも作ったんでしょうけど、結果的には塩の結晶が出来上がったってわけね・・・確かにこんなの全部食べたら死んじゃうわ」

 ユーリは口に手を当て、持っている皮袋の中身を推理する探偵のように見つめている。

「はぁっ・・・はぁっ・・・え・・・何それ。得体の知れない物を僕に食べさせたの・・・?毒だったらどうするつもりだったの・・・?」

 涙目になりながら訴えかける僕に、ユーリは眩しいほどの慈しみの笑顔を向けた。

「私も同じ物を食べて一緒に死んであげるわよ」

 ・・・・・・きゅん・・・・・・

 こういう彼女の勇ましさがたまらなく好きだ。
 許すそう・・・例え、彼女の手によってこの命が消えるのだとしても・・・。

 僕は空になったティーポットを置き、ずっと気になっていた事の1つを聞いた。

「ねえ、なんで君、そんな格好してるの?」

 彼女がルーカスと・・・なんて有り得ないことをエリーゼ嬢は言っていたけど、もちろん僕は信じていない。
 だが、彼の寝室から妻が半裸で出てくるなんて、さすがに夫としては不快でたまらない。

「ああ、縄抜けした時に脱げたのよ。」

 ・・・なるほど・・・。
 いや、なるほどって納得するのもおかしいけどね。

 ルーカスはユーリの計画にのった・・・つまり、この惚れ薬を使った恋愛劇は、彼女が考えた事なのだろう・・・。
 ルーカスがユーリを拉致監禁したのは、きっと余計な事を言わせないようにするため・・・なかなか酷い事をするじゃないか・・・。
 
 恐らく、ルーカスの『影』はユーリを縄で拘束する時、本気では縛らなかったのだろう。
 体に跡でも残ったら、僕がただでは済まさないからな。

 この執務室には、ある手順を踏むことで開く仕掛け扉があり、隠し部屋へと繋がっているが、中からは割と簡単に扉が開くようになっている。
 ユーリは監禁場所であった隠し部屋から縄を解いて脱出した後、ルーカスの寝室のベッドで彼を待っていた・・・という所だろうか。

 エリーゼ嬢と一緒に帰ってくるであろう彼を・・・。
 ユーリは何事もただでは済まさない・・・。
 半裸でエリーゼ嬢の前に出て来たのも、こんな手段に出たルーカスへの嫌がらせだろう。
 案の定、ルーカスにとってはこれ以上ない程の復讐となった訳だ・・・。
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