惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 その反応を楽しむように、ライオスは変わらない笑顔で答えを待っている。

 チッ・・・。あの赤ん坊がこんな腹黒になるとはな・・・。コイツ・・・ジルと似たタイプだな・・・。

「そうね・・・」

 長い沈黙の後、エリーゼがボソリとそう呟いた。

 ・・・・・・え・・・そうだったのか・・・!?
 俺はエリーゼと付き合っているのか!?

「お仕事関係でお付き合いをしているわ」

 ・・・まあ・・・そんな事だろうと思ったが。

 天にまで昇ろうとしていた俺の気持ちは急転直下の如く地に叩き落とされ、致命的なダメージを受けた。

「・・・仕事?」

 ライオスは眉をひそめ、怪しむ様にエリーゼに聞き返した。

「ええ、ルーカスの依頼で私がハンカチに刺繍をした物を売ってくれてるの」

「エリーゼ姉さんの・・・刺繍・・・?」

 ライオスは「そんな馬鹿な」とでも言いたげに呟くと、疑いの眼差しを俺に向けた。

「ああ、今日もその依頼でやって来た」

 違う・・・今日はエリーゼに告白するためにやって来たというのに・・・。

「へぇ・・・そうなんだ・・・じゃあ、僕にもまだチャンスがあるって事だね」

「え・・・?」

 ライオスの言葉に、エリーゼは何の事か分からずキョトンとしている。
 そんなエリーゼと、ライオスは真っ直ぐに向き直り、真剣な眼差しで彼女を見つめた。

「僕、エリーゼ姉さんの事がずっと好きだったんだ」

 ・・・・・・!!!!
 
 ライオスの口からあっさりと出てきた告白に、俺の頭はカッと熱くなった。
 それは俺がずっと言いたかったセリフを奪われた悔しさか・・・目の前でその告白を許した自分に対する苛立ちなのか・・・怒りにも似た感情が俺の頭の中を覆い尽くす様に支配しようとしていた。

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