惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「ねえねえ、ライオスが私に手紙を送ってくれたらしいんだけど、一つも届いてないのよ。そんな事ってあるの?」

 ああ・・・俺が処分したからな。

「ああ、よくある事だ」
 
 俺は表情を変えることなく、平然と応えた。

「そうなの!?」

「いや、よくある訳ないから。あったら大問題だから。」

 間髪入れずにライオスが呆れた様子で口を挟んでくる。
 
「そっか・・・そうよね・・・あったら大変よね・・・。もしかして・・・意図的に誰かが妨害していた・・・?」
 
「・・・」

 ・・・エリーゼにしてはなかなか鋭い推理だな。
 さすがに誰がとまでは分かっていない様だが、ライオスの視線は明らかに俺を向いている。

「エリーゼ姉さん、もしかして今までに男性から恋文が届いた事って無い?」

「うっ・・・無いわよ。べ、別に私もほしいとは思ってないけどね!」

 エリーゼは少し拗ねる様にツンとそっぽを向いてしまった。
 恋文なら、俺もエリーゼに渡しているが・・・それも今となっては何の意味もなさないのだろう・・・。

「ふーん・・・なるほどね。・・・まあ、僕にもそれは好都合だけど・・・」

 ライオスはエリーゼに聞こえない程の声量でそう呟いたかと思うと、少年の様な屈託の無い笑顔を俺とエリーゼに向けてきた。

「ところで、エリーゼ姉さんとルーカス兄さんって付き合ってるの?」

 ライオスの言葉に俺とエリーゼの肩は同時にビクリと大きく反応した。
 チラッと横目でエリーゼの顔を見ようとした時、エリーゼもまたこちらに視線だけを向けていた。お互いの目が合ったかと思った時、サッと何も言わず顔を背けられてしまい、俺は頭にグサッと何かが刺さったようなダメージを受けた。

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