惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「代わりにこれをやろう」

 俺は上着のポケットからいつも持ち歩いている飴玉を取り出し、エリーゼの手にのせた。
 エリーゼは包み紙を取り外した飴玉を手に頭上へ掲げ、日の光に当て始めた。

「綺麗ね・・・なんだか宝石みたい・・・」

「ああ・・・俺もそう思ったんだ」

 果たして彼女は気付いただろうか・・・?
 この飴の色が彼女の瞳の色にそっくりだと・・・

 首都の商店で、偶然目に映った飴玉が彼女の瞳の色を連想させて、気付いたら買い占めていた。
 それからは定期的に購入して常に持ち歩いている。

 俺は飴玉を見つめるエリーゼの瞳をジッと見つめて観察した。

 ああ・・・やはり似ている・・・。
 彼女が飴玉を日の光に当てている、その光が彼女の瞳をも照らし、いつもより淡い緑色になり、宝石の様な輝きを放っている。

「え・・・な、なに?」

 その瞳が不意に俺に向けられた。俺は吸い込まれるようにエリーゼの顔に近づいた。

「本当に、綺麗だなと思って」

 俺の言葉に見開いたその瞳は、飴玉や宝石など足元に及ばない程に、本当に綺麗だと思った・・・。

 俯いたエリーゼは、控えめに口を開くと、飴玉を押し込み、近くの木の側に座った。
 その姿を追うように、俺もエリーゼの隣りに寄り添うように座った。
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