惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 ・・・が・・・こっそり教えてもらったそのドレスの値段は、私の全財産を軽く超える金額だった。
 白目を向きそうになっている私に追い打ちをかけるように、店主が従業員と話す会話が聞こえてきた。

「これとこれとこれと・・・これも気にされてたわよね・・・ああ、ついでにこれも付けちゃいましょう!1個や2個増えても一緒よね!おーっほほほほ!!!」

 いやいや・・・それ絶対ルーカスに買わせようとしてるでしょ!!私が気にしてたって言ったら今の奴なら絶対買っちゃうわ!!

 しかし、もはや私にはそれを止める元気はない・・・。

「それにしても・・・あのサンドロス卿がこんなに長い時間、1人の女性を待つことが出来るなんて・・・よっぽど大切な方なんでしょうね・・・」

 大切な方・・・そう言われて嬉しい半面、それも惚れ薬の影響なのかと思うと気持ちは沈む。
 それよりも、その言い方が、以前にも誰かとルーカスがこの店に来た事があるように聞こえて、そちらの方が気になった。

 私は村を出てからの彼の事をよく知らない。
 もしかしたら・・・昔付き合ってた元カノとか出てきたり・・・いや、変なフラグ立てるのはやめとこう。

「じゃあ、これとこれも追加しちゃいましょう!ふふふ!!笑いが止まりませんわ!!おーっほほほほほほほほほ!!!」

 ・・・追加・・・しないで・・・くださいます・・・?

 なんせここは首都の激戦区・・・常に生き残りをかけた戦いに日々奔走している商売魂に、もはや感服するしかなかった・・・。
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