惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 ふと視線を感じ、エリーゼを見てみると、彼女は俺を見つめながら気まずそうにしている。

 ここでスカーレット嬢にエリーゼを紹介するかは悩む所である。
 俺に好意をよせるスカーレット嬢にとって、エリーゼの存在はおもしろくないだろう。
 スカーレット嬢がエリーゼに危害を与える可能性もありえる。
 事実、俺とユーリが親しい仲だと誤解した彼女が、ユーリに危害を加えようとした事があった。

 だがしかし・・・エリーゼを不安にさせたくはない。
 彼女は突然現れたこの女の存在が気になってるに違いない・・・。
 もしかしたらあらぬ誤解もしているかもしれん・・・。
 ならば、この女はエリーゼが気にする程の女ではないと安心させてやらなければ・・・。
 この女がエリーゼに何か危害を加えようとするなら、それは全力で阻止してみせる。

 俺はエリーゼを安心させるように微笑み、その隣に歩み寄り、エリーゼの肩を抱いた。

「スカーレット嬢、ちょうど良かった。紹介しよう。私の婚約者のエリーゼだ」

「・・・は?・・・こん・・・やく・・・・・・しゃ・・・?」

 スカーレット嬢は俺の言葉に、信じられないというような顔で立ち尽くしたが、すぐにその視線はエリーゼに向けられた。

 この女・・・なんて目でエリーゼ見てやがるんだ・・・。
 
 その女は積年の恨みでもあるのかのようにエリーゼを睨みつけている。
 そして見下す様な目つきで彼女をジロジロと見つめた後、目を細め、クスッと鼻で笑った。
 
 は・・・?今エリーゼを見て笑ったのか・・・?
 絶対に許さん・・・この身の程知らずが・・・。
 彼女を笑ったこと・・・一生後悔させてやる・・・。

 酷く不快な気分にさせられ、俺は目の前の悪役令嬢を睨み付けながら、どう国外へ追放させてやろうかと算段を立てている時だった・・・。
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