惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「初めまして。ルーカスの婚約者のエリーゼと申します」

「エリーゼ・・・!」

 エリーゼの口から出てきた「婚約者」の言葉に、俺の中を支配していた残虐非道な人格は一瞬で浄化された。
 俺がエリーゼを見つめると、ニッコリと微笑むその姿はキラキラと輝き、まるで神々しい光に照らされているようにも見えた。
 彼女は妖精ではなく女神だったのかと思うほどに眩しく、その姿に俺は再び釘付けになった。

「貴方が・・・ルーカス様の婚約者ですって・・・?」

 そう・・・俺の・・・婚約者・・・!

「ええ・・・彼から熱烈なアプローチを受けましたの。」

「エリーゼ・・・!受け入れてくれて嬉しいよ」

 嬉しそうに話す彼女を前に、俺は今すぐ彼女の手を取って教会へ駆け込みたい気持ちに駆られた。
 彼女が俺を婚約者と認めてくれたのなら、あとはもう結婚しかない。
 大丈夫だエリーゼ。全ての準備は整いつつある。

 先程エリーゼが眠っている間に指輪のサイズも測っておいたし、たった今ウエディングドレスのための採寸も済んだはずだ。
 店主には予め話をつけておいたから、さっそくドレスの製作に取り掛かっているはずだ。
 明日には予定通り俺達の結婚式を挙げられるはずだ・・・いや、挙げてみせる!!

「・・・ルーカス様が・・・笑っているですって!?」

 おっと・・・明日の結婚式の事を考えると、楽しみすぎてつい顔に出ていたようだな・・・。

「彼ったら・・・2人で住む家の木材も、2人で入る墓石用の石も勝手に用意しちゃって・・・ほんとせっかちなんだから・・・」

 エリーゼはそう言うと、少し照れた様に目を伏せた。

 ああ、エリーゼ・・・!!
 俺があの木を切り倒した事を、あんなに驚き困惑していたのに・・・君も俺と過ごす家を楽しみにしてくれているのか・・・!!

「ああ、もう木材の乾燥なんて待たずに、今すぐに俺達の家を建て始めよう!」

 今すぐ墓石に一緒に入ることはさすがに出来ないが、家なら可能だ。
 木材の乾燥など、建てる前でも建てた後でも一緒だろう!
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