愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
一緒に来てと言われ、すぐに家を出るのかと思えば、ユキがこたつから這い出て準備をしだしたのは日がとっぷり沈んだ時間だった。
結構歩くから厚着してね。と言われ、ロングコートに手袋、マフラーまで巻いてユキの待つ玄関に行くと、厚着をしてねと言った本人はコートを羽織っただけだから首元がとても寒そうだ。
私のマフラーを後ろから無理やり巻きつける。
「なんか首がかさばってていや」
「わがまま言わないの」
ユキは不満げに眉を八の字にしてこちらを振り返り、グイッとマフラーを外そうとしたからキツく結んでやると、諦めたらしくうなだれていた。
玄関を出ると、最近は毎日降っている雪が道路に薄く積もっていて、肌を掠める空気は痛いほど冷たい。
ちょっと前まで冬のこの寂しげな夜の空気は嫌いだったのに、最近はこの澄んだ空気が好きだったりする。
雪を踏みしめる音を楽しみながら、ぼーっと考えていると、右手を繋がれる。
右側に立つユキを見上げると、瞳の奥が揺れている様な気がした。