消えた未来
 二人にされてしまうと、空気が重たくて仕方ない。

 こんなはずではなかった、今すぐ逃げ出したいと、何度も頭の中で繰り返す。

 加えてため息まで聞こえてきた。

 勢いで行動した過去の私を呪いたい。

「……織部さん」

 久しぶりに名前を呼ばれ、暗い気持ちは一気に吹き飛んだ。

 喜びが勝り、顔を上げる。

「久我君……?」

 そこには、私の知っている久我君はいなかった。

 眩しいくらいの金髪は黒髪に落ち着いていて、顔色がよくない。

 一目で弱っているのがわかる。

 私は、久我君が病気であることをわかっているようでわかっていなかったみたいだ。

「久しぶり。元気だった?」

 久我君は優しく微笑んでいる。

 返す言葉は簡単なはずなのに、感情が追いついていなくて、声が出ない。

「……やっぱり怒ってるよな」
「違う、ショックだったけどあれは私のせいだったし、そうじゃなくて、嘘だったって先生に聞いて、あの……ごめん、私なに言ってるんだろう……」

 焦って話し始めたのはいいけど、一つもまとまっていなかった。

 久我君は笑いをこらえているけど、私は穴があったら入りたいくらいだ。

「それを含めて話してこいってことだろうから、とりあえず移動しよう」

 久我君が先に歩き始め、私はその背中を追った。

 そして休憩所のようなところにあるソファに並んで座ると、久我君は話し始めた。
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