消えた未来
「なんでもないよ」

 久我君のことを知るにはどうすればいいかを考えていたなんて言うと、どんな反応をされるか、考えなくてもわかる。

 言わないのが最善だろう。

 若干、不機嫌そうにしている星那に気付かぬふりをして、教室に入る。それからすぐに授業が始まって、星那に深掘りされることはなかった。

 それから二時間目が終わるまで、久我君は戻ってこなかった。

 話しかけようと思えば簡単に話せる距離にいるのに、私は放課後まで話しかけることができなかった。

 そもそも、どう切り出せばいいのかわからなかった。

 迷った結果、私がとった行動はやっぱり追跡だった。

 放課後、チャイムが鳴るのが先か、久我君がドアを開けるのが先か、というくらい、久我君はあっという間に教室を出ていってしまった。

「真央、今日も急いで帰るように言われたの?」

 急いで帰る準備を終えて、久我君を追いかけようとすると、星那に呼び止められてしまった。

「うん、そうなんだ。また明日ね」

 久我君を見失ってしまうことに対して焦っていて、私は嘘を言っただけでなく、星那が言葉を返すよりも先に教室を出た。

 幸い、久我君はまだ校門付近にいた。

 こういうときは、恐怖の対象でしかない金髪が目印になっていい。
< 18 / 165 >

この作品をシェア

pagetop