消えた未来
 久我君に気付かれないように、物陰に隠れながら進んでいく。

 久我君が歩く道は知らない場所で、少し気を抜けば、周りの景色に意識がいってしまいそうだ。

「なに、してんの」

 気を付けようと思った矢先、桜の花びらでできた道に目を奪われて立ち止まったことで、久我君に見つかってしまった。

 心から軽蔑した目を向けられている。

「えっと……」

 わかりやすく言葉を詰まらせたことで、誤魔化しても無駄な状況を作ってしまった。

「朝から俺の後、つけてたよな? なんか用? 昨日のことで文句でも言いにきた?」

 全部気付かれていたと思うと、急に恥ずかしくなる。加えてあの鋭い視線で、私は余計になにも言えなかった。

「なにもないなら、もうついてこないでくれる? 普通に怖いから」

 怖いのはどっちだ、なんて考えてる余裕はなかった。

 私は去っていく久我君の手首を掴んだ。

「昨日の久我君と、学校の久我君、どっちが本当の久我君……ですか?」

 咄嗟に出た質問だった。久我君は少し驚いている。

「そんなことを聞くために、ストーカーみたいなことをしてたのかよ」

 呆れたように、ため息をつかれた。

 否定しようと思ったけど、本来の目的に近い内容だったから、できなかった。
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