消えた未来
 でも、廊下に出てすぐに、星那は止まった。

「真央が久我とどこで約束してるのか、知らなかった」

 星那の照れ笑いにつられて、私も笑う。

「保健室だよ」

 答えながら、星那の前を歩く。

 星那は小走りで私の隣に来る。

「どうして保健室?」

 誰でも気になることだろうから、その質問は当然だと思う。

 だけど、正直に答えていいのか迷った。

「これも、真央の判断で決めていいことじゃないの?」
「うん……」

 申し訳なさでいっぱいになったのは、星那の怒った顔を見たからだ。

「久我の奴、真央に隠しごとをさせて嫌な思いをさせるなんて、許さない」

 でも、星那の怒りの矛先は、久我君だったみたいだ。

 久我君には悪いけど、内心ほっとした。

「星那、久我君のこと目の敵にしすぎじゃない?」
「だって、私の真央を奪ったから」

 星那は私の腕に抱き着く。

 その星那が可愛く見えたのと、理由がおかしかったのとで、笑みがこぼれる。

 星那はそのまま私を見上げてくる。

「真央、久我のこと好きになったりしてないよね?」

 星那もお姉ちゃんと同じようなことを思っていたことに驚いて、反応に遅れてしまった。

 それが、星那を余計に不機嫌にさせてしまった。
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