消えた未来
「好きなの?」
「……お姉ちゃんにもそれ言われたんだけど、なんでそんなに恋愛関係に持っていくの?」
「奈穂さんはどうかわかんないけど、そう思ってしまうくらい、真央が久我に構いすぎだから」

 星那は頬を膨らませる。

 なるほど、私の行動がそういう勘違いを招いていたのか。

 今日みたいに、久我君の秘密を知りたいと思っての行動も、拍車をかけたことだろう。

 そうこうするうちに、保健室に着いた。

「失礼します」

 ドアを開けると、保健室の先生しかいない。

「どうかしましたか?」

 先生は優しく声をかけてくれる。

 保健室の先生だからか、その雰囲気に安心感を覚える。

「あの、久我君はいますか?」
「侑生?」

 先生は一瞬、顔を顰めた。

 さっき感じた安心感が、嘘みたいだ。

「あなたが織部さんね」

 声のトーンも低くなって、なにもしていないはずなのに、怒られている気分になる。

「蘭子、顔怖い」

 すると、ベッドのほうから声がした。

 見ると、久我君がいる。

 どうやら、寝ていたらしい。

 というか、下の名前で呼び合う仲だなんて、もしかして、そういう関係なのだろうか。

「この人、俺の従姉」

 頭の中を覗かれたのではと思ってしまうようなタイミングで、久我君が言った。
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