消えた未来
 言いながら、ゾッとした。

 二十歳までと言ったら、あと四、五年しかない。

 もし自分の人生があとそれだけしかないと言われたら、きっと久我君のようにはいられないだろう。

「なんかさ……話聞いて、久我が死ぬ準備をしてるみたいに思ったんだよね」

 星那のその言葉に、ますます久我君の残りの人生が短いことを思い知らされた。

 そして、久我君がいなくなろうとしていること自体、嫌だと思った。

 私は、もっと久我君に生きてほしい。

 もっと、久我君といろんなことを話したい。

「真央、今なに考えてる?」

 すると、星那が私の顔を覗き込んできた。

 急だったから、思わず立ち止まった。

「なにって……なんで?」
「決意した顔? してたから」

 途中に疑問符があったのは、星那もその表現で合っているのかわからなかったからだろう。

 私も、決意した顔というものが、どういう顔なのかわからない。

「別に、なにも考えてないよ」
「嘘つき」

 正直に言うのはできなくて、誤魔化したのに、間髪入れないで、言われてしまった。

「真央の嘘くらいわかるよ」

 そう言われてしまうと、もう正直に話してしまうしかない。

「……久我君がいなくなるのは、嫌だなって」
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