消えた未来
 星那がそう言うのとほぼ同時に、昇降口に着いた。

 私たちは一旦会話を中断して、上履きに履き替える。

「でも変な話、真央にできることってないんじゃないかな」
「……なんか星那、ずっと意地悪」

 それには私も気付いていた。

 だけど、認めたくなくて、必死に絞り出そうとしていたのに。

 星那がはっきりと言ってしまったから、これはもう認めるしかなさそうだ。

「事実」

 だとしても、オブラートに包んで言ってほしかった。

「久我のためになにかをするんじゃなくて、真央が久我とやりたいことをすればいいんじゃない?」
「そんな、自分勝手なことできないよ」

 星那の提案を鵜呑みにできずに言うと、星那は鼻で笑った。

「なにを今さら」

 だから、オブラートに包んでくれないだろうか。

 この正論がずっと胸に刺さり続けていて、あと一撃でゲームオーバーみたいな感じになっている。

「自分のためにすることが、案外相手のためになることもあったりするから、思うようにやってみてもいいんじゃないかな」

 すると、唐突に甘い言葉が投げられた。

 そんなことがあるのかと疑ったけど、そうあってほしいと思っている自分がいた。

 ずっと厳しい言葉ばかりだったし、やっぱり自分勝手に動いていたわけではないと思いたかったからだろう。
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